モチベーション3.0を実践するマネジメント手法

HOME > モチベーション3.0を実践するマネジメント手法

トータルリワードを活用した行動科学マネジメント

東京・六本木の人気スポット「東京ミッドタウン」には、
美しい公園がある。そこに一つの石碑があることをご存じだろうか。
その石碑には、工事に関わった人々の名前が彫られている。
大手業者の上層部の名前ではない。
実際の作業に携わった作業員の名前が全部彫られているのである。

彼らは、妻や子どもたちを連れてこの公園を訪れれば、
自分の仕事を誇りをもって見せることができる。
こんな風に永遠に自分の名前が刻まれるとなれば、少しでもいい仕上がりを
目指して、手抜きなく働くはずだ。
「頑張ればボーナスを10万円増やしてあげるよ」
などと金銭で報いるよりも、はるかに効果的だと思うがいかがだろう。
こうしたことは、アメリカではもっと早くから行われている。アップル社では、、、、、

(石田淳著「組織が大きく変わる『最高の報酬』」より)


なぜ成果主義がまずいのか?

これまで、日本企業の多くがアメリカ企業のマネジメントをそのまま追随してきた。
アメリカでは昔から成果主義が徹底されていたように考えている人もいるかもしれない。
しかし、1970年代までIBMなどのアメリカの大企業は、
ほとんど終身雇用に近い年功序列制度をとっていた。
日本における、かつての松下電器のような企業が多かったのである。


しかし、80年代に入り、日本のメーカーが安くて高品質な賞品を大量に輸出するようになると、アメリカのメーカーは、一気に力を失い、成果主義を導入せざるを得なくなった。

そして、90年代に入ると、台湾や韓国などアジア諸国のメーカーが力をつけることで今度は日本のメーカーがガタガタになっていった。このとき日本はアメリカの成果主義を追随したのである。しかし、90年代のアメリカでは、成果主義の見直しが急速に進んでいた。それには、2つの理由があった。
1つは、成果主義の導入によって心を病む社員が急増したことである。仕事ができない社員がうつになるだけでなく、仕事ができる社員がバーンアウトと呼ばれる燃え尽き症候群に陥ってしまったのだ。
もう1つは、企業文化がめちゃくちゃになってしったことだ。単純な成果主義では、会社の中の人間はほとんどが敵であり、後輩に仕事を教えるという行為は自分の不利益につながる。そのために、チームワークが全く作動しなくなった。

日本人は会社が好きではない

(注)2004~2009年の間に世界5219社の社員を対象にした調査結果
(出所)ヒューイット・アソシエイツ

若者は仕事に面白さを求めている

(出所)日本生産性本部


こうした経験を踏まえて、いま、アメリカの企業が最重視しているのがトータルリワードと呼ばれる報酬の考え方である。

「報酬」というと、まず真っ先に賃金や賞与など、金銭によるものを思い浮かべるはずである。これにせいぜい福利厚生がセットになったものが、おおかたの「報酬」のイメージだろう。
トータルリワード(Total Rewards)とは、これに加えて、金銭では得ることのできないさまざまな「報われ感」も報酬として与えるという考え方である。
社員一人一人を大切にし、いかに人として総合的に社会的に報いていけるかということだ。

簡単にいってしまえば、
「この会社で働いてきてよかった」
「この人たちと仕事が出来てうれしい」
「社会や世界に貢献できている」

社員がこころからそう思えるような組織かどうか、が問われてくる。
アメリカの企業はすでに、トータルリワードを活用したマネジメント手法を多くの企業がはじめている。


トータルリワードとは、総合的にかつ社会的に報いること

トータルリワードとは、総合的かつ社会的に報いることである。もちろん、賃金、賞与などお金も一つの「報われ感」の源である。このようにごくわかりやすい「金銭的報酬」を除いた、お金以外の報酬、つまり「非金銭的報酬」について具体的に次のABCDEFの6つの方法を紹介する。

1. A(acknowledgement) 感謝と認知

仕事の大切なパートナーとして認知し感謝すること。その人がいてくれて嬉しいという態度を具体的に示すことが重要。給料を与えているのだからやって当然という態度をとったり、無視するようなことをしていないか。無視は罰を与えるよりも人を傷つける。

2. B(Balance[of work and life]) 仕事と私生活の両立

人はなんのために働くのかといったら、一つは、暮らしを充実させたいからである。勤務形態などフレキシブルに対応して、私生活も大切に考えてあげること。とくに、有能な女性社員を活用するうえで欠かせない要素である。

3. C(Culture) 企業文化や組織の体質

自由に意見やアイデアを述べられ、役職や立場を超えて認め合いねぎらい合える連帯感があるか。足を引っ張り合ったり、派閥で争っていたりというような陰険な組織に忠誠を尽くす人はいないだろうし、成果を上げようと積極的になる人も少ないはずだ。

4. D(Development[Career/Professional]) 成長機会の提供

有能な社員ほど成長意欲が高い。もちろん凡庸な社員が成長してくれたら言うことはない。社員の成長のために、セミナーや研修会に参加する費用や時間を与えたり、社内でキヤリアアップのための制度を設けるなどしていくことが求められる。これは、すでに導入している企業も多い。

5. E(Environment) 労働環境の整備

オフィスの立地や居心地は、社員にとって重要問題である。便利でおしゃれな場所にオフィスがあればそれに越したことはない。スペックの高いパソコン、使いやすい文房具をまとめておく。ただし、行動科学マネジメントの観点からは、他の五つより重要度はやや低い。
※米教育機関ワールド・アット・ワーク(World at Work)参照

6. F(Frame) 具体的行動の明確な指示

仕事とはあいまいに指示されるものであってはならない。結果を出すために何をどのようにすべきかをきちんと示してあげることが重要。正しい仕事の進め方を教えてあげること、そして結果につながるのかつながらないのかわからないムダな仕事をさせないことは、リーダーがメンバーに与えなければならない最も重要な報酬である。何のためにやるのかわからない「作業六明らかに意味がない仕事ほど自発的な行動を妨げるものはない。この私が提唱する「フレーム」は行動科学マネジメントならではの特別な要素である。



セミナー情報